バイオフィルムとは?
身近なところで言えば、水気のある台所の三角コーナーや風呂桶等、そこにこびりついているネバネバ・ヌルヌルしたもの、あれがバイオフィルムです。
バイ菌がネバネバの多糖体を作り、膜になって物体の表面を覆っている状態です。バイ菌は、膜の内側で繁殖し増えていきます。このネバネバの膜が傘(カプセル)の役目をしています。洗剤や殺菌剤などの薬剤はそのままでは中に浸透せず、膜の中のバイ菌を取り除くことはできません。タワシでゴシゴシ擦って、つまり、口の中では歯ブラシで磨いて初めて落とすことができるのです。
プラークと虫歯の関係
歯の表面でも同様のことが言えます。このバイオフィルムのことを歯科では、歯垢(プラーク)と呼んでいます。
虫歯を引き起こす原因菌は数多く存在しますが、ネバネバの多糖体を作る代表選手がミュータンス菌と呼ばれるバイ菌(細菌)です。
ミュータンス菌は砂糖を栄養源に増殖します。砂糖を食べた後、排泄物として強い酸とネバネバ(多糖体)を作ります。そしてこのネバネバがカプセルを作り、内部に無数のバイ菌を繁殖させるのです。
さて、カプセルの中で作られた酸は、唾液が届きにくくなっているため濃度は高くなります。この酸によって歯の表面(エナメル質)のミネラル(カルシウム、リン等)が溶け出します。これを「脱灰」といいます。すなわちムシ歯のはじまりです。しかし、表層の脱灰で済んでいるうちならば、ブラッシングによりバイオフィルムを取り除ければ、唾液中のミネラルが歯の表面に再び取り込まれていきます(再石灰化)。初期の虫歯であれば、削らずに治すことができる場合もあるのです。
治療だけでなく当クリニックで「正しいブラッシング」の指導に力を入れているのはそのためです。