患者さんとの信頼関係、心の絆を築く
1.治療(キュア)から予防(ケア)へ
昔の歯科治療は、「治す」という治療一辺倒の考え方から、主に「つめたり」「かぶせたり」「痛みを止める」ことだけを目的としていました。世間的にもまだ、歯医者というとそのイメージが色濃く残っており、患者さんの来院への抵抗感は、そういった治療を行ってきたせいでもあると思っています。しかし現在は、インフォームド・コンセントに基づき患者さんに理解、納得していただく治療が中心となり、さらに疾患の治療とともに精神的に癒す治療も大切になってきています。
WHOの調査によれば、寿命決定因子としては生活習慣50%、環境20%、遺伝子20%、医療10%の割合と言われています。
もし、「歯が痛い」といって患者さんが来院したとき、歯の中の神経をとる、あるいは歯を抜くという処置を行ったとしても、我々は寿命決定すなわち健康に10%しか貢献できていません。そしてまた何年かすると、他の歯で同様な処置をすることになります。
しかし医療行為とともに、どうして痛むのかを患者さんに理解していただき、予防するにはどうしたら良いかを、生活習慣にまで踏み込んでお教えし、実践していただくことにより、生活習慣分パーセンテージが加算され、我々の貢献度を上げることができます。
すなわち、歯の健康を第1に考えるには、治療(cure)だけでなく「予防(care) を中心とした診療」も同様に大切であるということです。そういった思いから、当クリニックでは、治療とハッキリ区別した予防のための「予防ルーム」を併設しています。ここは、治療前後のケアはもちろんのこと、歯や口の中の不安について何でもご相談いただける場所として機能しております。
2.患者さんを中心とした診療
患者さんとの信頼関係がなければ、長期の総合治療、ましてや生活習慣にまで踏み込んだ予防を行うことは不可能です。
信頼関係を得るためには、患者さんとのコミュニケーションが大切であると考えています。患者さんを中心に、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士が同心円上に並び、患者さんを強力にサポートする診療形態が望ましいと考え、当クリニックでは、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士が常勤しています。
口の中全体を総合的に治療する
痛い歯、ムシ歯、血の出る歯ぐき、そういった1本または1部分の治療だけでは口の中の健康を維持することはできません。口の中全体を総合的に治療すること(1口腔単位の治療)が必要と考えています。
1.初期治療(基礎工事)
“木を見て森を見ず”ではありませんが、口の中全体を見渡し、まず理想的なかたちを設定します。そして、その理想型が正しいか否かを常に検証しながら、1本1本の歯の治療を行っています。
建物を建てることを想像して下さい。まずは「基礎工事」です。いくら外観が立派でも「基礎工事」が悪ければ家は倒れてしまいます。歯の治療においても同じことが言えます。最初に歯の根や歯ぐきの治療をしっかりと行うことが大切です。さらに歯の位置を動かす歯科矯正も「基礎工事」の範疇に入ります。ともに手抜きは許されません。
2.治療方法の選択(建物の設計)
つぎに「建物の設計」です。二階建てにするか、あるいは木造、コンクリート造にするかなどは基礎の条件あるいは経済的条件等によって違ってきます。これは歯科治療においても同じです。例えば歯が抜けた場合、ブリッジ、義歯、インプラント、歯の移植等いろいろな治療方法があり、個々の患者さんにとって“どの設計がベストなのか”を考え、呈示することが歯科医師には求められます。このことをオーダーメイド治療と言います。
3.アフターケア
さらに「アフターケア」をきちんと行わなければ万全とは言えません。長い年月風雨にさらされれば建物は必ず傷んできます。同じように、治療した歯が永久にもつわけではありません。大きな、あるいは取り返しのつかない被害に遭わないうちに、日頃の患者さん自身の手入れと歯科医院での定期検診を受けることで、大切なお口全体の健康が維持できます。
そのためには前述したとおり、まず患者さんとのコミュニケーションが大切であると考えています。お互いの信頼関係がなければ、長期的展望に基づいて口の中全体を総合的に治療すること(1口腔単位の治療)は到底望めません。予防から、最終処置まで常に1口腔単位の総合的な診療を行うように心掛けています。
当クリニックとしては、患者さんひとりひとりの10年、20年といった経過を見つめ続けることによって、さらなる診療が行なえれば最高です。まだまだですが、今後とも努力する所存です。