アタッチメント義歯とは
アタッチメントとは、残っている歯に設置される固定部と、入れ歯につける可撤部の組み合わせにより、歯と入れ歯を連結する装置(支台装置)です。例えると衣服のホックを想像していただくと分かりやすいと思います。
アタッチメントの特徴
代表的な支台装置であるクラスプに比べて、バネがない分、見た目(審美性)がよいのが最大の利点です。また、歯を低くして利用するため、歯を揺らすような力が加わりにくいという特徴もあります。
欠点としては、
- 装着のためには歯を削る(神経をとる)必要がある
- 保険では製作できないため費用が高い
- 入れ歯で覆われてしまうと清掃が難しい場合がある
等が挙げられます。
当院では、とくに根面アタッチメントのうち、
- OPAアタッチメント
- 磁性アタッチメント
を使用しています。
症例1 根面アタッチメント(1)
1985年2月初診、47歳男性。83年に他院にて入れ歯を製作したが、合わず、使用していないとのこと。84年に上顎左右3および下顎2~2を東京歯科大学病院口腔外科にて抜歯し、その後補綴科の私が担当することになった患者さん。右上7を除いた残存歯の歯周ポケットが5〜6mmあり、動揺が大きかった。今現在なら、抜髄せずに、コーヌス義歯を選択するかもしれないが、当時の自分の技量では困難であった。
とにかく早く入れ歯を製作したかったので、右上7以外は抜髄し、歯冠を切断した。85年4月に、残っている歯の部分も覆う入れ歯(オーバーレイ・デンチャー)を装着した。その後、左上4、5は歯肉の外科手術を行い、7月に上顎左右4および下顎左右3に一時的なの根面アタッチメントを仮着し、歯肉が成熟するのを待った。また、根面アタッチメント辺縁歯肉の開放を目指していたので、一時的な入れ歯(暫間義歯)の形態を修正し、特に舌側開放部の舌感に異物感が生じないか反応を確かめた。
一時的なアタッチメントを装着後、しばらく使用してもらった。辺縁歯肉が退縮し、安定してきたので、10月に再度歯の形を整え型採りを行い、最終的な根面アタッチメントを装着した。
1985年12月、初診終了時の状態。根面アタッチメント辺縁歯肉の開放の一番の目的は、唾液による自浄作用により、根の虫歯が生じにくくなることを期待しての理由からである。さらに、歯周病の予防もできれば尚更結構なことである。もちろん、入れ歯を外しての歯磨きが最も大切であることは言うまでもないが、昼食後に歯磨きできる環境にない方は、爪楊枝を使う感覚で歯間ブラシを入れてみてはいかがですかと指導している。
症例2 根面アタッチメント(2)
2016年11月初診、68歳男性。当院、代診の先生の症例。保存可能な左下3、右下5に根面アタッチメントを、左下2、右下3に根面板を製作し、17年2月に上下顎に総入れ歯を装着した。この時の下顎の入れ歯は、支台歯辺縁歯肉を入れ歯で覆う形態であった。
スライドに掲載していないが、2018年3月、根の部分の虫歯(根面う蝕)にて右下5のアタッチメントを作り直した。他の残存歯にも根面う蝕が認められた。患者さんは、よく飴を食していたとのことで、可能な限りやめて頂くようにお願いし、経過を観察することした。
20年2月のリコール時、う蝕が進行し、これ以上の放置は危険であることから再治療を行うことになった。今回は、積極的に支台歯を覆わずに辺縁歯肉の開放を行いたい旨を説明し、同意して頂いた。まず、古い入れ歯を改変し、特に舌側の開放部に異物感が生じるか否かの反応を確認した。つぎに6月、左右側に分けて歯茎の外科手術を行い、歯肉より上の歯の確保を行った。9月、根面アタッチメントおよび根面板を再製作した。古い入れ歯を用いての型採りを行うことで同時に咬み合わせも記録した。
2020年11月、再初診終了時の状態。今度は根の部分の虫歯にならないことを願っている。